医薬品の市場規模は拡大傾向にある
医薬品業界全体で見ると、処方数は年々増加しています。
これには日本における高齢化の進み具合が早いことが関係しています。
高齢者が増えることで医療ニーズも高まり、処方される医薬品の量が増えているのです。
また、製薬業界の開発努力によって、今までにない新しいタイプの薬が出たり、より効果の高い医薬品が使われるようになったりしたことも関係しています。
実際に2009年の医薬品生産金額は6.8兆円ほどだったものが、2020年には9.3兆円にまで伸びていることも、この事実を裏付けています。
また、国民全体の医療費が増えているだけでなく、そのうち薬局調剤医療費が占める割合が高まっていることもポイントです。
全体的に薬価の引き下げが進んでいる
このように、製薬業界全体としては生産量や処方並びに利用総数は増えています。
その一方で、その伸び率に対して薬剤費の伸びを抑えようとする動きが見られます。
というのも、医療費が国の財政を圧迫する状況が顕著に見られ、これからさらに高齢化が進むにつれて医療費がかさんでいくことが確実となっているからです。
そこで、医療費の大きな部分を占める薬剤費を減少させるために、薬価そのものを引き下げようとしているのです。
新薬開発には膨大なコストがかかるのですが、薬価が下がると利益を出しづらくなり製薬会社の経営が厳しくなるリスクをもたらします。
実際に製薬メーカーは事業の切り離しやリストラなどを行って、経営策の立て直しをしているケースが多々見られるようになっています。
また、薬価を高く設定することができ、利益を出しやすい薬の開発に力を入れるようになっています。
生活習慣病のような疾病ではなく、レアな病気に対応した薬を作ることで薬価を高く設定できるということから、希少疾患薬へ重きを置く傾向が強くなっているのです。
製薬業界に見られる課題とは?
医療ニーズは高まっているのに薬価が下げられることで、上記のように経営に工夫が求められるようになっているのは大きな課題です。
もう一つのポイントは、ジェネリック医薬品が増えているということです。
使用頻度の高い薬の多くの特許が切れる時期に差し掛かってきていて、たくさんのジェネリック医薬品が現場で使用されています。
こうしたことから、日本の製薬業界は世界の中でも成長が鈍化して厳しい状況にあります。
これからは、海外展開や外資企業の買収や統合、事業拡大などが活発に行われる可能性が高くなります。
新興国でも経済成長が強くなるにつれて、高価な医薬品の利用が増えますので、こうした新興国における事業の展開というのも進めていくべき分野となります。
このように、幅広い分野において変化が求められる状況となっているのです。