「ひとりでしにたい」という漫画を読んで孤独死について考えるようになった

『ひとりでしにたい』のあらすじと概要

『ひとりでしにたい』はカレー沢薫さんによる漫画作品で、原案者としてドネリー美咲さんも協力しています。
2019年9月号から講談社の『モーニング・ツー』にて連載され、第24回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞しました。
この作品は現代の日本を舞台にした人間ドラマで、主人公は35歳の独身女性・山口鳴海というキャラクターです。
彼女を取り巻くさまざまな環境を通じて、死について深く考えさせる内容となっています。

鳴海はあこがれていた叔母の孤独死に衝撃を受け、それをきっかけに自分の生き方や「一人で美しく死ぬ」ための終活について考え、行動するようになります。
しかし、理想の老いや死の実現を阻むのが、結婚や介護、老後資金などの厳しい現実でした。
また、職場の後輩に自身の無知を指摘されたことも、鳴海が孤独死への理解を深めるきっかけとなります。

このようにあらすじを書いていくと、暗いストーリーだと思われるかもしれません。
確かに取り扱っているテーマは重いのですが、読んでいて重苦しさを感じさせないのが特徴的です。
登場するキャラクターたちは個性的で、突っ込みどころ満載のネタやセリフが散りばめられています。
マンガの世界に引き込まれながら、いつか必ず訪れる「自分自身の死」について思いを巡らせ、死に向けた準備の重要性を認識させられます。

家族に対する価値観が多様化する現代社会において、結婚や子どもを産んで育てる生き方を選ばない人々が増えています。
私もその一人かもしれません。
いつか必ず死を迎えるけれど、老いも死もやってくるのは何十年後、今はうまくイメージできない、それが現在の私の心の状態です。
そんな“今”だからこそ、読んでおきたいマンガです。

『ひとりでしにたい』を読んでの感想

孤独死や老後についてくわしく描かれており、今まで深く考えてこなかった老いや死について、さまざまな気づきを得ることができました。
主人公の鳴海は毒舌家で個性的で、重いテーマなのですが、笑いを誘うシーンが挟み込まれることでエンターテイメントとしても楽しめるように計算された構成になっています。

一人で生き一人で死ぬとしても、発見が遅れた孤独死を迎えることは避けたいものです。
そのためにはお金が必要なのでしょうか?
その答えは、イエスです。
でもマンガを読み進めるうちに、必要なのはお金だけではないという方がもっと重要なのだと気付かされました。
いくら「一人で美しく死ぬ」ことを願っても、生きていく上では周囲の人々との関係が不可欠なわけで、そのためには異なる意見であっても理解しようと歩み寄る姿勢が大切であるとも学びました。

30代の若さでは気付かないことが多いのですが、老いや死に関する課題がマンガを通じてリアルに迫ってきます。
人生について深く考えるきっかけを与えてくれた一冊です。
数年後、今よりも年齢を意識するようになったらもう一度読み返してみたいと思います。